マスフローコントローラとは
マスフローコントローラ(mass flow controller)は、質量流量を測定し、設定した流量に自動的に制御する流量制御機器です。流体の測定には質量流量(重さ)と体積流量(容積)の2つの方法がありますが、マスフローコントローラは温度や圧力の変動に関係なく質量流量を正確に測定および制御することができます。そのため、半導体製造プロセスや分析装置など、高い再現性と精度が求められる場面で広く使用されています。
マスフローは一般的に熱式センサーとコリオリ式センサーを使用して質量流量を測定します。熱式センサーは、流体の流れに応じて温度変化が生じる原理を利用して質量流量を計測します。一方、コリオリ式センサーは、流体が振動することで生じるコリオリ力を検出し、それに基づいて質量流量を計測します。流体(気体・液体)や使用条件に応じて方式を選ぶ必要があります。詳細はこちら
マスフローコントローラの構造と動作
一般的な熱式のマスフローコントローラー主要構成部品は流量センサー、コントロールバルブ、バイパスです。動作は下記手順を自動で行います。
- 質量センサを加熱し、流体の移動(質量流量)を測定
- ブリッジ回路で質量流量を電気信号に変換
- オペアンプで電気信号に変換された質量流量信号を増幅
- AD/DAコンバータでデジタル信号に変換
- 演算回路で設定流量と現在流量を比較
- PID制御してバルブアクチュエータを駆動
- 1~6を繰り返す(フィードバック制御)
マスフローコントローラの測定原理
熱式のマスフローコントローラーの流量センサー原理は以下の通りです。
- ステンレス製のキャピラリーチューブには、2つの電熱線が巻かれており、同じ温度で加熱されます。これらの電熱線は流体の流れるパス上に配置されています。
- ガスが停止している場合、上流と下流の電熱線は同じ温度を保ち、バランスが崩れません。
- しかし、ガスが流れると、上流の電熱線はガスから熱を奪われ、下流へと流れることでバランスが変化します。
- この変化を検知するために、キャピラリーチューブに設置されたブリッジ回路が使用されます。ブリッジ回路は電気信号を測定するための回路であり、上流と下流の電熱線からの信号を比較します。
- ガスの流れによるバランスの変化は、ブリッジ回路によって電気的な信号に変換されます。この信号は質量流量として測定されます。
熱式のマスフローコントローラは、このような熱を利用した測定原理を使用して流量を計測します。この測定された流量情報は、後続の制御回路にフィードバックされ、バルブの制御によって設定された流量に近づけるための制御動作が行われます。各社のマスフローコントローラは、流量センサーの設計や特許技術によって異なる特長を持つことがあります。
Lintecのマスフローコントローラ特長
リンテックのマスフローは独自の低温センシング構造により、ガスの流量制御をはじめ、世界に先駆けて液体のマスフローコントローラを開発しました。
リンテックのマスフローコントローラは、高精度で高速測定を可能にするために、低温センシング構造(周囲温度補償式センサ)を採用しています。このセンサーの原理は、周囲温度を流量センサーにフィードバックすることで、流量センサーの温度を必要以上に上昇させない独自の構造です。
- センサーの熱ダメージが少ない(長寿命): 低温センシング構造により、流量センサーの温度を抑えることができます。これにより、センサーの熱ダメージが少なく、物理的な寿命が長くなります。
- 流体の熱分解リスクが低い(オゾン等が制御可能): 一般的なマスフローコントローラよりも低温で測定されるため、オゾンなどの熱分解リスクが高いガスの流量制御に最適です。流体に対する熱の影響を最小限に抑えることができます。
- 高速流量制御が可能: 低温センシング構造により、従来品の熱式センサーよりも圧倒的な応答速度を実現しています。高速な流量制御が必要な場合に優れた性能を発揮します。
このような低温センシング構造により、高精度で高速な流量測定と制御を実現しています。高速応答の製品はこちら
気体と液体のガスマスフローコントローラ
気体のガスマスフローコントローラは、ガスマスと略されることがあります。これは精密な気体の流体制御を目的に開発された流体制御機器であり、液体マスフローコントローラよりも先に登場しました。気体はボイルシャルルの法則により温度と圧力の影響で体積が変化しますが、ガスマスフローコントローラは温度や圧力の影響を受けずに精密な流量測定を行い、内蔵されたコントロールバルブによって設定流量に自動的に制御することができます。主に定圧比熱を利用した熱式マスフローコントローラが主流です。ガスマスフロー・マスフローメーター製品はこちら
液体のマスフローコントローラは液マスと略され、精密な液体の流量制御を目的に開発されました。リンテックは世界で初めて熱式の液体マスフローコントローラを開発し、半導体業界での技術革新に貢献しました。熱式の他にもコリオリ式や差圧式などの方式も存在します。液体のマスフローコントローラ・マスフローメーターの製品はこちら
要約:
- 気体のガスマスフローコントローラは、気体専用の流体制御機器であり、温度や圧力の影響を受けずに精密な流量制御が可能です。
- 液体のマスフローコントローラは液マスと略され、精密な液体の流量制御が可能です。リンテックは熱式の液体マスフローコントローラを世界に先駆けて開発しました。
マスフローコントローラに関するFAQ
ゲージ圧と絶対圧の違いは何ですか?
ゲージ圧は大気圧の事で、0を大気圧1atm(約101kPa)とします。絶対圧は絶対真空を0とします。その為、ゲージ圧0kPa=絶対圧101kPaです。