マスフローとはどういう意味ですか?
マスフロー(Mass flow)は、質量流量という意味ですが、一般的にはマスフローコントローラ(Mass Flow Controller)やマスフローメーター(Mass Flow Meter)などの流量制御機器や測定機器の略語として使われます。なお、マスフローコントローラとマスフローメーターを区別するため、マスフローコントローラはMFC、マスフローメーターはMFMと略してフロー図などに記載されることもあります。
マスフローと体積流量の違いは何ですか?
マスフロー(質量流量)と体積流量は、両者とも同じ流量(単位時間に流れる量)を表現しますが、体積流量においては温度や圧力によって変動する密度の要素を考慮する必要があります。一方、マスフローは質量を単位としているため、密度を考慮せずに正確な流量を測定できるという大きな違いがあります。
マスフロー(質量流量)は求める値が質量、つまり重さです。単位時間当たりに流れた物質の重さを表現します。ガスの単位は、SCCMやSLMが使用され、液体の単位はg/minが使用されます。一方、体積流量は求める値が体積、つまり容積です。単位時間当たりに流れた物質の容積を表現します。ガスや液体に関わらず、一般的な単位はℓ/minなどの温度、圧力が指定されな体積が使用されます。
マスフローの単位は何ですか?
マスフローの単位は、ガスマスフローの場合は一般的にSCCMやSLMが使われます。これは瞬時流量が1分間継続した時の体積を0℃1気圧換算で表した単位です。また、NCCM、NLM、CCM、LMなどの単位もあり、換算する温度が20℃や25℃になります。一方、液体マスフローの単位は一般的にg/minが使用されます。これは瞬時流量が1分間継続した時の重量(g)を表した単位です。ガスとは異なり、体積の表記ではなく重量を表します。
SCCM
standard cubic centimetre/minの略であり、半導体業界では気体の理想状態を0℃1気圧として標準としています。リンテックでは、0℃1気圧の条件下で1分間継続した場合の体積(㏄)を表します。ただし、業界によって標準が異なる場合があるため、ご注意ください。
SLM
standard liter/minの略であり、0℃1気圧換算の条件下で瞬時流量が1分間継続した場合の体積(ℓ)を表します。SCCMの流量の1000倍です。ただし、標準とされる温度が異なる場合があるので、ご注意ください。
NCCM
normal cubic centimetre/minの略であり、20℃1気圧換算の条件下で瞬時流量が1分間継続した場合の体積(㏄)を表します。
NLM
normal liter/min の略であり、20℃1気圧換算の条件下で瞬時流量が1分間継続した場合の体積(ℓ)を表します。NCCMの1000倍の流量です。
CCM
cubic centimetre/min の略であり、25℃1気圧換算の条件下で瞬時流量が1分間継続した場合の体積(㏄)を表します。
LM
liter/min の略であり、25℃1気圧換算の条件下で瞬時流量が1分間継続した場合の体積(ℓ)を表します。CCMの1000倍の流量です。
g/min
液体の質量流量単位で、瞬時流量が1分間継続した時の質量(g)を表します。
動作差圧とは何ですか?
動作差圧とは、マスフローコントローラやマスフローメーターが正常に動作するために必要な、一次圧と二次圧の差圧のことを指します。マスフローコントローラやメーターの内部構造には微細な流量測定部や流量制御部が存在し、一定の圧力損失が発生します。そのため、仕様に応じた圧力差が必要となります。一般的に、マスフローコントローラの動作圧力は50〜300 kPaの範囲にあります。ただし、低差圧仕様や液化ガス仕様、高圧仕様など、仕様や流量によって異なるため、選定の際には注意が必要です。
マスフローコントローラの動作差圧は?
一般的なマスフローコントローラの動作差圧は50~300 kPaです。大流量の場合、必要な差圧が大きくなる傾向があります。
また、液化ガスを差圧の大きい一般的なマスフローコントローラで制御すると、ジュール=トムソン効果により温度が低下し再液化する場合があります。そのため、液化ガスでは低差圧仕様のマスフローコントローラを選定する必要があります。
マスフローコントローラの制御範囲は?
一般的に、マスフローコントローラの制御範囲は2~100%F.S.(フルスケール)です。したがって、2%未満の設定値を入力するとコントロールバルブが全閉になり0%制御となります。ただし、リンテックではモデルやオプション、仕様によっては2%未満の設定値でも設定した流量になるように流量制御を行います。詳細についてはお問い合わせください。
コンバージョンファクターとは何ですか?
マスフローコントローラはさまざまな流体の質量流量を制御します。熱式マスフローコントローラでは、流体の種類によって温まりやすさ(比熱)が異なるため、流体固有の係数で補正する必要があります。この係数をコンバージョンファクターと呼びます。
代表的なコンバージョンファクター
ガス種 | C.F. | ガス種 | C.F. |
---|---|---|---|
窒素(N2) | 1.000 | 空気(Air) | 1.000 |
ヘリウム(He) | 1.400 | 一酸化炭素(CO) | 1.000 |
水素(H2) | 1.010 | 二酸化炭素(CO2) | 0.740 |
酸素(O2) | 0.990 | 一酸化窒素(NO) | 0.990 |
アルゴン(Ar) | 1.400 | アセチレン(C2H2) | 0.630 |
コンバージョンファクターの測定
コンバージョンファクターの測定にはボイルシャルルの法則を利用したビルドアップ法などがあります。
ビルドアップ法によるC.F.測定手順
- N2校正のマスフローコントローラ二次側に容積を把握している容器を真空状態にする。
- 真空にした容器二次側のバルブを止める。
- マスフローコントローラで測定対象ガスを一定流量で制御する。
- マスフローコントローラ二次側容器の圧力上昇と温度から流量を計算する。
- 計算した流量とN2校正のマスフローコントローラで設定した流量との比率を計算する。
コンバージョンファクターの計算
定圧比熱と分子量がわかればコンバージョンファクターの計算も可能です。コンバージョンファクターが不明なガスの流量制御はリンテックへ直接お問合せ下さい。
混合ガスのコンバージョンファクター
コンバージョンファクターが違う2種類以上の混合ガスでは、ガス比率によりコンバージョンファクターが変化します。リンテックのマスフローコントローラで混合ガスを制御する場合、コンバージョンファクターを計算致します。直接お問合せ下さい。
マスフローの測定方式は何がありますか?
マスフローの測定方式には、主に以下のような方法があります。
- 熱式マスフロー: 流体の比熱を利用して質量流量を測定する方式です。熱を発生させて流体の温度変化を計測し、その変化量から質量を推定します。一般的には発熱抵抗を使用し、流体による熱の奪われ具合から質量を計算します。
- コリオリ式マスフロー: 流体の慣性を利用して質量流量を測定する方式です。振動するセンサーを流体に挿入し、流体の質量によって振動の振れ具合が変化します。この振動の変化を検出して質量を推定します。コリオリ式マスフローメーターは高精度で幅広い流体に対応できます。
- 差圧式マスフロー: 流体が管内を通過する際に生じる圧力差を計測し、質量流量を推定する方式です。通常、管内の狭窄部や特殊な形状のデバイスを使用し、流れる流体の速度に比例した圧力差が生じます。この圧力差から質量流量を計算します。オリフィスプレート、ベンチュリメータ、ピトー管などが差圧式マスフローメーターの例です。
これらの方式はそれぞれ特徴と利点があり、使用目的や流体の性質に応じて選択されます。詳細な性能要件やアプリケーションによって最適な方式を選定することが重要です。
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